のるか? きくか?『LIVE・WONDER〜2004春〜』

[丹下桜]2004年5月17日

ライブは演奏者と観客が一体になって盛り上がるものと、クラシックコンサートのようにひたすら演奏者が素敵な曲を聴かせるものの二つに大別される。「声優ライブ」と言うのはアイドルのコンサートと一緒くたにされることが多く、前者のような盛り上がりを求める観客が多いように思われる。

そんなライブの喧騒とは無縁の恵比寿の街に私は降り立った。アトレ恵比寿を横目にし、閑静な一角にそれはあった。

恵比寿イーストギャラリー。
 結婚式のパーティーにも利用できるビルである。

ライブ会場は地下一階にある。広くはない。一列の長さは20名なのだが、そのうちの右端5人と左端5人は普通の高さの座席に座る。真ん中の10名はと言うと、両端よりも1メートルほど低い席に座るのだ。大きな掘りごたつを思い浮かべてもらって、その中の掘っている、すなわち足を入れる部分に真ん中の10名、普通の床の部分に両端の10名を入れるようなものだ。

これから考えると最後尾はA列の席から数えてM列なので、20×14=約280名の収容が可能である。(個人的にはおよそ260余名ほどの参加だと思います)。

そして、今回も健在だったレディースシート。A・B席の中央の席の20名程がWONDER-NETの女性会員によって占められていて華やか。女性会員を優遇するのは相変わらず良い判断だ。ここまで男女比の差が顕著な構成なら、女の子を逃がさないようにしておけば、男はついていく(笑)。何もせずとも。

私の席は前から最後尾に近い11番目の列。オペラグラスが必要かとも考えたのだが、その心配はなかった。意外にも舞台からの距離は十数メートルだったのだ。



つかみはオーケー? 袴姿の登場だ

ようこそLIVE・WONDERへ。

薄暗い闇の中でANGELやLittle Seraphの音楽が鳴り続ける。既に開始時刻の16時は過ぎている。会場は波を打ったように静かだ。いや、むしろ針でつついたらすぐにはじけそうな風船たちが場を支配している。

「これから桜さんに会えるんだ」
 「一体何を歌うのだろう」
 会場中が緊張した面持ちで登場の瞬間を待つ。

長い沈黙の時を経た。バンドメンバーが姿を現し、桜さんの声のポエム「桜の花が咲く頃に」が会場内に響く。遅れて、袴姿が見えた。

卒業式?

脳裏に浮かんだのはそんな言葉だった。頭には生花の飾りを付け、紫色の着物に茜色の袴で登場した桜さん。それぞれの衣装に桜の花をあしらい、春爛漫の姿で登場する。春色の服装だとは思っていた。だが、誰が袴姿で登場しようと考えようか。観客の度肝を抜いたところで、ゆるやかな調べで「春の宵〜夢のはじまり〜」を歌いだす。2004年5月2日。春、ひとときの夢の中で、桜の花は鮮やかによみがえる。




光と影のマジック

続いて「桜の花が咲く頃に」を歌い、トークに入る。「初夏ですが、一日だけ春が来る、お花見をしているようなライブ」をするとのこと。恐らく春に作った曲を中心に歌うライブになるだろう。どんな構成になるか、楽しみにしよう。

話の後は曲演奏に戻る。「君のサイドシート」ではキーボードの吉原さんとサビのコーラス。「Ange passe」では楽しそうに。「奇蹟の風」では目を閉じて『君に気持ち届ける』ように歌う。

今回は、桜さんを彩る光と影に注目した。ライブ前半での、一曲を歌い終わってから伴奏が止むまでのの余韻に目を向けていた。最後の演奏が止まるまでの間、桜さんもじっとしているのだが、その時に照らされるスポットライトの陰影が、和風の姿を際立たせ、彼女自身をあでやかに見せる。

子供のような甘い声からは想像もできない、
 「ああ、大人の女性というのは、こういう方をいうのだな」
 という変化で魅せる。

普段目にすることのない袴姿と現代的なライブ、そして光と影の絶妙な組み合わせによって、この日は「ハレ」の特別な日であると強く意識させられる。




LIVE SAKURA'S CHAT

次はライブのひとつのコンテンツとして位置づけられている、公開放送での「SAKURA'S CHAT」。ファンにとっては面白く、そして気になる発言も取り上げられているので、それを追ってみることにしよう。

「メールを読み上げられると、どこだどこだと探す『間違いない!』」
生放送ならではの醍醐味。いつもSAKUARA'S CHATで読まれているあの人って、誰なんだ? 気になりますよね。私も探しました。

「カップル限定ライブをしたい」
SAKURAさんの発言。慌てて「シングルがんばれライブ」も……、とフォローを入れる姿に笑えた。カップル限定ライブか、そんなのがあれば一度は行ってみたい。

「アカペラで『After the rain』を歌う」
ライブならではのハプニング。ミレニアムコンサートツアーの最後に歌ったアカペラを思い出して、昔を懐かしんでしまった。

「『tune my love』は好きな曲で、いつか歌いたい」
Little Seraph、ANGELなどが幅を利かせている今のライブで、この発言。昔の曲を捨てた訳ではないんだね。実現には著作権などの権利の壁が立ちはだかると思いますし、非常に難しいとは思います。(前澤さんが作っていた曲ならできるのかも)ですが、いちファンとして桜さんの声からその歌を耳にする日を、せつに、せつに待ち望んでいます。




そして後半戦へ

「花のうた」と「五月雨」のバラードを歌い上げ、桜さんは一旦舞台から退出する。

暗闇の中、ハミングバードのPoetryが終わると、服装が一転、空色のキャミソールにシースルーチュニック、そして、ライムグリーンのアームカーディガンを羽織った春色衣装で登場した。新曲「ハミングバード」を皮切りに後半戦が始まった。

トークをはさんで、「翼」、「YOUR CHEER GIRL」、「光の勇者」、そして「FLAT OUT」を熱唱する。ライブの締めとして盛り上がりそうな、有名な曲を揃えてきた。しかし、後半は今ひとつ盛り上がりに欠けたようにも思われた。




のるか? きくか?

全席においていた販促用チラシ

以前の「LIVE・WONDER」では「YOUR CHEER GIRL」以外の曲でも手拍子が起こっていたが、今回はほとんどなかった。「声優・丹下桜」から、さくらとして歌ってきた数年で、ここまで残っているファン(会員)は比較的「ほっと和む空間」に慣れているの事実である。観客もノリを求めて来ているわけではないし、年齢層自体が上がっているので、腕を伸ばしてはしゃぐことも少なくなっているのかもしれない。しかし、である。

アンコール前のラストの曲「FLAT OUT」。
 前回は主催者側からコール表のような用紙をライブ前に全員に配っていた。これを見ながら、サビの部分で「FLAT OUT」と叫べば良かった。ところが、今回は「Cherry A La Mode?はじめまして?」の販促用の広告がそれぞれの席に置かれていた。

「FLAT OUT」と「陽のあたる場所」を歌うという思い込みが先にあったので、この広告を見たときには違和感を覚えた。「FLAT OUT」は会員を継続した人が聞ける特典であり、新規会員の方なら、「FLAT OUT」を流していたSAKURA'S CHAT#94(2004年1月4日放送)のラジオを聞けなかった人には、「どこで盛り上がるんだろう?」と分からない構成だったとも考えられる。

じっくり聴いて和む、落ち着くライブであるのが本来の趣旨に近いし、観客席では感極まって泣く子もいたので、これはこれで成功と言える。それでも私個人としては主催者サイドからの盛り上がるための対応が、前回に比べて中途半端に終わった印象を受けたし、演奏者と観客が一緒になって本当に楽しめる空間になっていたのだろうか、という疑問をライブ後半では感じていた。


観客サイドの話もひとつ。
Happy-go-Lucky掲示板で、「どこで盛り上がったらいいのか分からない」という意見をちらほら見かけました。今回のようにライブ後半で演奏していた割と元気な曲なら、手拍子くらいは十分あり、だと私は思います。こういうのは誰かが手拍子を始めると、意外と周りに広まるものですよ。肝心なのは、最初の勇気。ただし、場の雰囲気を壊しかねないほどの盛り上がりは、WONDER-NETにとって不必要であるのは言うまでもありません。

気が向いたら、今までの「LIVE・WONDER」「LIVE・WONDER〜2004春〜」で体験した掛け声シリーズをまとめて公開しようかなぁ、とぼんやり考えています。次もライブに当選したら、喜んで作るかもしれません。




WONDER-NETでは、まだ3回目のライブだ

「FLAT OUT」を演奏後、メンバー全員が舞台から退出。アンコールが沸き起こる。

再び、舞台に舞い戻る桜さんたち。「You're my ANGEL」を歌い終え、「アンコールありがとう」と言ってバンドメンバー紹介に入った。

バンドメンバーは客席から向かって左側がキーボードとアコーディオン(他コーラスを含むいろんな楽器)担当の良原(よしはら)リエさん、中央右側がアコースティックギターとマンドリン担当の相馬哲也さん、一番右がアコースティックギター担当の前澤ヒデノリさん、そして、中央左側にボーカルの桜さんという構成。

最後の曲はアルバムバージョンの「陽のあたる場所」。
 イントロの「ららら」という声の部分を掛け声にするために、事前に練習を行う。

そして、本番。
 WONDER-NET会員と桜さんが声を合わせて「ららら」と歌うシーン。

――あ、やっと舞台と観客が一緒になった。

「陽のあたる場所」を、後方の座席から聴く。
 春空の下、歌声に惹き寄せられ、陽だまりまでたどり着いたライブ。
 WONDER-NETとして、まだ、たった3回目のライブ。

次は、もっともっと良いライブ空間を演出してもらえることを、心から願ってやまない。



演奏曲一覧

――OPENING POETRY(桜の花が咲く頃に)――

01.春の宵〜夢のはじまり〜
02.桜の花が咲く頃に
03.君のサイドシート
04.Ange passe
05.奇蹟の風

――SAKURA'S CHAT――

06.花のうた
07.五月雨

――POETRY READING(ハミングバード)――

08.ハミングバード
09.翼
10.YOUR CHEER GIRL
11.光りの勇者
12.FLAT OUT

――アンコール――

13.You're my ANGEL
14.陽のあたる場所

――ENDING POETRY(陽のあたる場所)――

会場:恵比寿EAST GALLARY地下一階 / 2004年5月2日(日) 16:00開演
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