2000年3月に大阪で開催されたコンサートツアー「未来からのエアメール」より、数えて11年振りの関西でのイベント。立命館大学Voice&Animation研究会(以下、VA研と呼ぶ)主催の新入生歓迎トークイベントに赴いた。
会場となるプリズムホールは立命館大学内のイベントから研究発表の基調講演に使われる所で、席には段差が設けられており、どの座席からでも会場の中央が見渡せる。また、ステージ正面には写真等を表示できるスライドが設置されており、トークイベントではあるが、視覚的にも分かりやすくなっている。椅子もパイプ椅子ではなく、座り心地の良い椅子だということに驚く。
普段のLIVE SAKURAで使われる会場よりも良い場所であり、入場前に配られた冊子(新入生へ桜さんからのメッセージやプロフィール、進行予定表等を記載)を見ても、VA研の力の入れ様を随所に感じた。
客層もLIVE SAKURAと比べると全く違う。大学の新入生歓迎イベントという位置づけなので、新入生が前方の列に集められているのもあるが、基本的に全員が若い。女性も多い。ざっと見た感じだと平均年齢は20代前半だろうか。「カードキャプターさくら」を小学生の時に見ていた人たちが多いのだろうな。
VA研は、過去数回声優を招いて無料でトークショーを行っている。よって、桜さんの大ファンというのではなく、アニメ・声優が好きな大学生が聞きに来ることも多いと考えられるため、桜さんのファン層は関西では年齢層も男女の比率も違うんだぜ、と考えるのは早計であろう。
舞台がライブ会場のように暗くなり、司会者のトミキ氏(VA研所属の男子学生)がイベントに際しての注意を説明した後で、拍手に包まれながら桜さんの登場となった。司会と桜さんの二人でトークイベントを進行することになる。
しかし、ここで問題が早速発生する。ラジアラを聞いている人は知っていると思うが、桜さんは最近天然ボケの傾向が強い。従って、司会はしっかりしている人(もしくは突っ込める人)の方が適任である。だが司会も緊張しているのか——素人の司会者が数百人を前にして話すのは、当然緊張するはず——、桜さんに対して突っ込む余裕はない。むしろ、ボケ×ボケのWボケコンビになりそうな雰囲気を醸し出していた。そんなコンビで大丈夫か?
さくらの部屋
ここは、桜さんが演じた作品や趣味等を聞いて行くコーナーである。
「カードキャプターさくらで好きなクロウカードはありますか?」
桜さんの好きなクロウカードは「翔(フライ)」。子供の頃の夢は「魔法少女とお嫁さん」で、空を飛ぶことに憧れがあった桜さん。ロマンティストな答えとは裏腹に、声優としてはフライという発音が言いやすかったから、というのもあったそう。「風(ウィンディ)」だと、ィの音が重なるから言いにくいらしい。
そういう訳で、「翔(フライ)」のカードが良いですと昔に話したことがあって、実際に収録の時にも「翔」のカードが登場する場面が増えたようだ。
そして、桜さんから突然「トミキくん、緊張してる? 大丈夫だよリラックスだよ」と言われる司会者。どうやらトミキ氏、事前に桜さんを京都駅まで迎えに行った際には澱みなく喋っていて好青年だった(桜さん談)のに、あまりに緊張しすぎて逆に桜さんが司会をいじる立場になってしまったようだ。ボケが二人いると、どちらかが突っ込みに回る法則。大丈夫だ、問題ない。
そして、世にも珍しい司会者に突っ込む桜さんの姿がこれから見られるのだ。
「DOG DAYSについて」
共演している櫻井孝宏氏がアドリブばかり飛ばすので、笑いを堪えるのが大変だった。
ここで、司会が「カードキャプターさくらのイメージが強かったので(もっと妹っぽい性格の人かなと思っていた)、実際に会うとビオレさんみたいなお姉さんで驚きました」と言うと、すかさず桜さんから「おねーさんですよ〜」と、まったりした突っ込みが入る。司会が「ビオレみたいな人」と墓穴(?)を掘ると、さらに「お・ね・え・さ・んで良いですから」と強調される始末。
「趣味について」
趣味は読書、くぅちゃんと遊ぶ。好きな花は桜。
このあたりはブログの読者やラジアラリスナーにはおなじみだろう。
「絵本を書いたこともある桜さん、お勧めの絵本はありますか?」
「昨日、お勧めの絵本をメモしたのですが、そのメモを忘れてしまいました」と話した桜さん。個人的に、桜さんは必ず何かうっかりをやらかす人だと思っていたのだが(失礼)、やはりやっていた! まず1桜(桜=ラジアラで認定されたうっかりの単位)獲得ですな(笑)。
ちなみに、お勧めの絵本は「ぐりとぐら」。
桜が一喝!
このイベント宛に頂いたお便りに対して、お説教、助言をするコーナーである。
怒りたくもないし怒られたくもないけれど、今日はそれでも敢えて怒らせて頂きますと話す桜さん。いわゆる「ふつおた」コーナーと似ている。以下、投稿内容と桜さんの一喝(または回答)である。「お姉さん・丹下桜」の一面をご覧あれ。
1.5/1だけど、五月病になってしまいました。
⇒ 5/8のLIVE SAKURAに来て弾けちゃいなさい!
2.普段は寡黙だけれど、スポーツの応援の時には熱くなってしまう。
⇒ 心の中で六甲おろしを歌って落ち着きなさい。1コーラスで落ち着かない場合は2コーラス目へ行くのよ。
3.会場に集まっている立命館大学新入学生への応援メッセージをお願いします。
⇒ 今日はようこそお越し下さいました。これからも頑張って下さい。応援しています。
4.今期はアニメを20タイトル以上見ようと思っているのですが、時間がありません。
⇒ 「DOG DAYS」ならブルーレイで出るから、後でそれを買いなさい。
5.桜さんにお説教してもらえると思うとドキドキします。
⇒ いいから黙って正座しなさい(司会「椅子の上で正座して頂きたいと思います」)
6.イベントの紹介文に「昔からアニメで活躍されているベテラン声優」という表記に納得いかない。桜さんは永遠のアイドル声優だ。
(司会「実はこのイベント紹介文、僕が書いたのですが
」 桜さん「私、失礼なこと言われていたのですか?」)
⇒ 30代素敵女子の魅力が分からないなんて、まだまだね。
7.声優を目指している人のアドバイスをお願いします。
⇒ 先日のアニメイト横浜でのイベントでも(同じ話を)話したのですが、今は養成所も数多くあるので、チャンスは多いと思います。
8.掃除や整理整頓が苦手です。
⇒ (桜さんは共感しつつも)ダイレクトメールは取って開封を繰り返して貯めないように。
9.今まで「未来からのエアメール」ツアーしかライブに行ったことがありません(司会「けしからんですね」)
⇒ ライブに来なさいっ。
カードフォーチュンテラーさくら
桜さんが会場にいる人を占うコーナーである。
タロット占いだと「Death(死)」や「The Hanged Man(吊るされた男)」などのカードが正面のスライドに現れると(本来は悪い意味だけ、という訳でもないのですが)イベントとしては引いてごめんなさいということになる可能性があるので、エンジェルカード(※1)というポジティブなメッセージが込められているカードにしましたと言う桜さん。スピリチュアル関係の人が得意とするカード占いである。
この類いのコーナーは、ラジオ「堀江由衣の天使のたまご」等にも存在している。占いはタロット等でなくても、どのような種類でも良いのだが、結果から無理矢理ものごとを解釈するのがこの種のコーナーの醍醐味である。
1.就職活動について占って下さい(男性)
昨今の就職活動事情は非常に厳しいものがある中、桜さんがカードを引くと「フリーダム」という、「イヤッホウウウ」とガッツポーズをしているようなカードがスライドに表示された。イラストから一同大爆笑。
自由 Freedom
自由に考え、愛という感情を表現できるように、エンジェル達は導いてくれます。
(桜さんの解釈)何をやっても道は開けます。
2.恋愛運について占って下さい(女性)
(司会「僕は既に枯れてしまいました」 桜さん「ラジアラのお兄さんみたいになりますよ」)
リスニング Listening
あなたはエンジェル達とコミュニケーションを図っています。そしてあなたが受け取るメッセージはまるで現実のようです。メッセージを信用してください。
(桜さんの解釈)自分が意識していなくても目に入るもの、気になるものもエンジェルのメッセージと言われていますので、自分の身の回りにサインがあるかもしれません。
3.私の2011年を占って下さい(男性)
ソウルメイト Soulmate
あなたが求めていた魂の伴侶であるソウルメイトが現れます。導きに従えばソウルメイトという天の愛の贈り物を満喫することができるでしょう。
(桜さんの解釈)運命の人との出会いがあるかもしれません。ただし、運命の人は伴侶ではなく、同性や動物の場合もあります。
この解釈を受けて司会が「素敵な『彼氏』との出会いがあるかもしれませんね!」と言うと、桜さんにお説教をされる(!?)という一幕もあった。ちなみに桜さん自身のソウルメイトは、くぅちゃんだと考えているらしい。旦那の立場は
(笑)。
4.大学の修士論文を書かないといけないのですが、それについて占って下さい(男性)
修士論文の展望をエンジェルカードに聞くのかい! と驚く桜さんが占うと結果は、
パワー Power
あなたの持つ力を発揮する時がやってきました。力を発揮することは,あなたにとっては当たり前のことです。心に愛を持ってあなたの持つ力を表現してください。
そう、修士論文を他力本願ではいけない。
(桜さんの解釈)「自己責任で頑張ろう! 君なら出来る!」と応援した。
解釈の仕方にも寄るが、占い師さくら(?)の面目躍如と言った所だろうか。個人的には、トークイベントの中で最も面白いコーナーだった。これはラジアラの新コーナーに採用できるのではないだろうか、と思う程に。
桜アルバム
間違えてさらに次のコーナー「叫べ!!彼氏たち!!」のタイトル名を叫んでしまう桜さん。これで2桜獲得ですね。自分のお気に入りを写真に取ってきて、それを元にトークを繰り広げる。桜さんが撮って来た写真が画面に大写しにされる。そう、TBSの某はな○カフェを思い浮かべると分かりやすいだろう。
1.さくらグッズ(桜の緑茶とハンドクリーム)
「コント・ド・フランス」のメーカーが好き。ロクシタンのハンドクリームを愛用している。
2.VOCALIUMの未使用写真
新江ノ島水族館にて、閉館後に撮ったという写真が大写しになる。
「VOCALIUMの写真で光が綺麗ですが、それはCGですか」と聞かれますが、実は自然光だと話している桜さん。先日、私も新江ノ島水族館へ行って写真撮影をして来たのだが(まだ公開準備中)、ジャケット写真のようにはとてもならなかった
。
3.くぅちゃん
くぅちゃんをカメラ目線にさせるには「くぅちゃん、おやつ」と言うと目を爛々と輝かせてこちらを見てくれると話す桜さん。撮影後にはちゃんとおやつをあげます。
4.実家のリビングにいるトイプードル達
おやつだよと言うと、やはりこちらも目をキラキラさせる。(司会「まさにDOG DAYSですね!」)
確か昔「実家で犬のブリーダーを始めました」というようなことをブログかどこかで書いていたような気がしたのだが、少し記憶が曖昧。
5.DOG DAYSの収録現場と肉球パン
収録が長引いたので、「レオ様に仕えるビオレとしては主にお腹をすかせる訳にはいかない」と、レオ役の小清水亜美さんにその肉球パンを渡した。しかし、既に具の部分は桜さんが「毒味で(意訳:おいしく)頂きました」。パンの生地だけでもおいしかったそう。
6.青山・こどもの城
こいのぼりを都会で見ることが珍しかったから撮った。
7.ラッキーエビス
一生に一度は見てみたいラッキーエビス。実は2010年はエビスビール120周年で、ラッキーエビスは非常に当たりやすくなっていたらしく、見かけた時には嬉しくて買ってしまった。ちなみに桜さんはビールしか飲めません。
8.バスソルト
バスソルトに着いている名前がデザートみたい。本当に塩(岩塩)が入っている。
司会「普通の入浴剤と違うのですか?」
桜さん「おいしそうです」
叫べ!!彼氏たち!!
このコーナーでは会場の客(5名)が壇上に上がり、彼女や妻や娘等、自分の最も愛する人へ愛の溢れる言葉や、エピソード、思い出などを、30秒〜1分程でマイクを通して話すコーナーである。もちろん愛する対象が二次元であっても構わない(そうしないとコーナーが多分、成り立たない)。
審査員は桜さんで、優勝者には自身の名前入りで、サイン色紙をプレゼント。参加者にも先程の「桜アルバム」で紹介されたバスソルトをプレゼントする。
司会「(説明後)と、こんな企画ですが、桜さん、どう思いますか?」
桜さん「それは企画の段階で聞くべきでは(会場爆笑)。もうやるしかないと思います(笑)」
お姉さんモード再び。
しかし、ここで考えて欲しい。審査員が桜さんということは、優勝するには自身の彼女または妻に対するエピソードを語るか、桜さんへの愛(演じたキャラクターではない!)を叫ぶかが最も優勝の可能性が高い。
5名の男性の自己紹介が終わり、愛を叫ぶ時間が来た。
トップバッターは付き合って1年になる腐女子に彼女に愛を伝える。二人で「カードキャプターさくら」や「アンドロイドアナ・MAICO」も見たことがあるとか。桜さんも「(アニメ等の分野でも)コミュニケーションが取れるのが一番ですよね」と桜さんも応援する。優勝するには、実に正攻法だと思う。
予想通り二次元等の思いを叫んだ人もいた。
「咲-saki-」のキャラクター原村和(のどか)への思いを伝えた方もいた。「インターハイで優勝したら、俺はお前に告白する」と、言うと、会場からここ一番の大喝采を浴びる。「ゲームキャラと結婚式をあげる人もいますから」とは桜さんの弁。他にも桜さんが演じた「Fate/Extra」の赤セイバーに対しての思いや、「クーデレ最高!」(桜さんは何かのキャラクターだと思ったそう)と叫んだ人もいた。
そして、最後に人妻・丹下桜さんへの思いを言葉にして伝える人が現れた。「桜さん大好きー!」とマイクなしで絶叫。このストレートな告白が桜さんの心をとらえたようで、彼が優勝となった。
朗読〜うたのすきなことり〜 そして閉会へ
桜さん自身が制作した絵本「うたのすきなことり」を朗読。個人的には、朗読コーナーよりもここでVOCALIUMの曲を1曲でも演奏してもらったら、それこそ究極のイベントになったかもしれない。
立命館大学新歓イベントであることを忘れたかのような、光速で過ぎ去った90分だった。「新入生のみなさんも会場に来ている皆さんも、絶対、大丈夫だよ!」の言葉で終了する。
関西の地で11年振りのイベント。司会者をいじるお姉さんな桜さんは珍しく、それだけでも見る価値はあったと思う。加えて無料だ。WONDER-NETの時代から、いつかは関西でイベントをやってくれないか、またどのようにしたら関西でできるのかを考えたことがあったけれど、資金面で個人が呼ぶのには無理があると挫折したことを思い出した。それが今回、このような形で叶うことになって非常に嬉しかった。
関西でも「桜さんに来て欲しい! ライブやイベントをして欲しい」という需要はまだまだあると思う。今度はまた別のイベントでくることがあるのか、その日を楽しみにしていたい。
会場:立命館大学びわこくさつキャンパス・プリズムホール
2011年5月1日(日) 15:00開演
<参考・関連記事>
※1.エンジェルカードの説明については、インターネットで検索。
・さくらblog「5/1イベント本番前・秘話」
・さくらblog「5/1立命館大学新歓祭」